はじめに
福島原発事故による放射能汚染は広範囲に広がり、私たちは放射能と向き合って生きていくことを余儀なくされています。政府が定める「基準値」以下の汚染食品が全国に流通し、大人も子どもも内部被曝を強いられています。
こうした状況の中で、市民自らが放射能を測定し、放射線防護の知識を身につけ、正しく判断していくことが必要となっています。私たちは、そのための「ツール」として、関西初となる市民放射能測定所を5月19日にオープンしました。
朝日新聞は9月30日、4月からの半年間で、「新基準超え1%程」「底魚・キノコに集中」と報道しました。国際的にみても高い基準値(一般食品100Bq/kg)を超える食品が、11万4千件という少ない検査数にもかかわらず1394件も見つかっており、新たに108品目が出荷停止となっています。食品の放射能汚染がとどまるところを知らず、今なお広がっていることを示しています。
京都での測定結果をみると、京都府内産の農産物からは検出されていませんが、流通している加工食品等からは放射性セシウムを検出することがあり、市民による監視をいっそう強める必要があります。
西日本でも、京都に続いて市民測定所開設しようという動きが始まっています。市民による放射能測定の全国的な取り組みは、「すべての食品の放射能測定と公表」という大きな目標を実現する力になります。
京都での取り組みをいっそう大きくしていくとともに、関西、西日本での市民測定所ネットワークづくりを進めていきましょう。
1 活動総括
(1)開所までの経過
京都の市民放射能測定所は、原発避難者支援活動(うつくしま☆ふくしまin京都)の取り組みの中から始まりました。開所までの取り組みは次のとおりです。
2011.9.25 避難する権利と賠償を求める集い
- CRMS市民放射能測定所・阿部宣幸さんから福島の汚染の現実について話を聞く
京都(関西)にも市民放射能測定所の必要性を認識し、開設の呼びかけ行う
2011.11.27 京都(関西)に市民測定所をつくろう キックオフ集会
- CRMSから岩田渉さん(測定)、阿部宣幸さん(広報)に来ていただき、市民測定所の役割、意義についてお話をいただく。実際に食品の放射能測定を行い、鶏肉などからCsが検出される
2011.12.11 第1回設立委員会
- 以降毎月1回委員会を開催し設立にむけて取り組みを開始
- 2012年1月から開設資金カンパ・会員募集を開始
- 企画・募金運動推進・測定チームをつくり、活発に動き出す
2012.2.4 プレマさんでの測定見学会
2012.3.4 市民測定所をつくろう!キャンペーン集会(向日市民会館)
2012.4.6 ATOMTEX社・AT1320Aが納品される。測定実習開始。
2012.4.8 ホンマにつくるぞ市民測定所 守田敏也さん講演会+測定所見学会
2012.5.19 オープニングセレモニー(開所式+測定見学会)
(2)開所後の利用実績
- 会員数 10/19現在 189名
- 開所日数 64日
- 利用延べ人員 110人 5/20~10/18
- 測定検体数 依頼測定129件、自主測定83件
- 測定データの公開 一般用 自主測定結果を公開 7月粉ミルク、8月チーズ
会員用 測定全データの公開
放射性セシウムを検出したものなどは、測定結果シートを公開
(3)測定所会員拡大の取り組み
<測定所見学会の開催>
- 4月8日(土)守田敏也さん講演会のあとに実施。
- 5月19日(土)オープニングセレモニーの後に実施。
- 8月25日(土)8名
- 9月30日(日)4名
<無料測定会の開催>
- 7/30-31 平和と民主主義をめざす全国交換会・大阪大会での無料測定会 9検体測定
- 10/20-21 2012年京都測定所まつりでの無料測定会
(4)測定技術・技能向上の取り組み
- 測定結果検討会の開催 6/24
- 土壌の試験測定の実施 7/22ほか
(5)ほっこりカフェの開催
- 7月より月一のペースでOPENしている「ほっこりカフェ」は、震災により避難する方々や支援 者の方はもちろん、誰でも気軽に集まれて、ゆっくりお話ができるような場所を作れたらという気持ちから始めました。測定所の雰囲気をちょっとイメージチェンジし、BGMを掛け、測定済の材料で作ったクッキーをつまみながら、お喋りできる空間です。会費は300円、子どもは無料です。
この場を設けてから、今まで以上にたくさんの方々と出会うことができました。参加された方の多くが測定所会員になってくれています。
- 実施日 7/13(水)大人12名、こども1名
9/13(木)大人12名、こども4名
(6)「しあわせ☆ごはん」の実施
- 内部被曝をしないためには、放射能汚染されていない食品を選ぶことが必要ですが、毎日の食品選びはとてもたいへんです。本当は一番子どもたちに食べて欲しい魚を「食べさせていない」というお母さんたちの声をよく聞きます。
この「しあわせ☆ごはん」という企画は、共同で魚を購入し、測定し、シェアするもので、安全な魚を子どもたちに食べさせたいという思いで始めた企画です。
- 実施日 9/25いわし、10/9サンマ、10/18たら
(7)測定所まつり~会員総会の開催
- 福島原発事故による食品の放射能汚染の実態と食品による内被ばくの危険性、防護するために放射能検査が必要であることを明らかにし、京都・市民放射能測定所の意義、必要性を広くアピールする取り組みとして、昨日・今日と開催しました。
- まつりの準備、宣伝過程で会員拡大がすすみ、現在189名の会員を達成しています。本日の総会で討議の上、10/27の測定日から会員の測定料金の値下げ(2,000円)に踏み切りたいと思います。
2 年間活動方針
(1)1年間の目標
- 測定所会員が200名突破した(近づいた?)で会員の測定料金を2,000円に値下げすることを踏まえ、この1年間の目標を「300名会員の達成で会員測定料金1,000円への値下げを行う」こととします。
- 測定器の2台目購入をめざします。測定所を利用することができない地域への出張測定(測定キャラバン)に取り組みます。
(2)自主測定の強化と測定データの公開
- テーマを決めた測定する自主測定を継続します。テーマを会員から募集します。
- 会員向けには、全測定データの公開を継続します。さらに見やすい、わかりやすい公開となるように工夫していきます。
- 一般用には、自主測定データを中心に公開データを拡充していきます。
(3)測定所利用、会員拡大の取り組み
- 測定利用の拡大をはかるために、測定所開所日の拡大(平日開所日の増加、夜間開所の検討)をめざします。そのために、測定スタッフの拡充を行います。
- 測定所を利用しにくい地域(京都北部地域など)への出張測定(測定キャラバン)を具体化します。
- 測定所見学会を継続的に開催し、会員拡大をすすめていきます。土曜、日曜だけでなく、平日の開催も具体化していきます。(11月は21日・水・10:00~12:00)
(4)測定スタッフ養成講座、技術向上研修の開催
- 測定スタッフの拡充のため、測定スタッフ養成講座を開催します。
- 現在の測定スタッフの測定技術向上のための研修を行います。あわせて、土壌測定実習を行い早期に土壌測定ができる体制をめざします。
(5)ほっこりカフェの開催
- 今後はもっと横の繋がりを広げ、あまり関心のない方にも来ていただけるような環境を作り、 「ほっこりカフェ」定着に向けて呼びかけ、参加を増やしていけたらと思います。その中で、測定所会員もさらに増やしていきます。
(6)しあわせ☆ごはんの開催
- 現在はスタッフ間での自主測定をかねた取り組みですが、この間の取り組みの中で見えてきた課題を整理し、なるべく早い時期に、会員・一般向け企画として取り組んでいきます。
(7)内部被曝防護の学習会、講演会の企画
- 会員むけ、一般むけの学習会、講演会を企画していきます。
- 測定所でつくられたつながりを活かした少人数の学習会を適宜開催していきます。
(8)食の安全についての取り組み
- 国の基準(一般食品100Bq/kgなど)を引き下げるための取り組みを行います。
- 地方自治体の「食品の放射能検査」などの施策に対する意見表明を行います。
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