2017年11月30日に福島県立医大が示した「甲状腺検査[本格検査(検査2回目)]結果概要」によると、避難区域等13市町村、中通り、浜通り、会津地方の4地域において、それぞれ期間あたりの甲状腺がんの発見率を比較すると、13市町村>中通り>浜通り>会津地方という結果であった。これは、福島の小児甲状腺がんの発症に対して原発事故が影響していることを強く示唆するものであった。
上の発表から1年半も経過した本年6月3日、甲状腺検査評価部会は、以下のような所見を発表して、本格検査(検査2回目)に発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連を否定した。「発見率に影響を与える要因(検査実施年度、先行検査からの検査間隔など)を可能な限り調整し、暫定的に年齢別・市町村別UNSCEAR推計甲状腺吸収線量を用いて行った線量と甲状腺がん発見率との関連の解析においては、線量に応じて発見率が上昇するといった一貫した線量・効果関係(線量・効果関係)は認められない。」
評価部会と県立医大の結果の違いが、放射線線量地域をどのように区分するかに依存していることは明らかである。「県民健康調査」検討委員会ならびに評価部会は、従来、13市町村を高線量地域、中通りを中線量地域、浜通りと会津地方を低線量地域とに分けて甲状腺検査の解析を行ってきた。今回、評価部会がUNSCEAR推計甲状腺吸収線量のデータを持ち出して新たに地域分けを行い、線量・効果関係はないとの結論を導いたのである。
甲状腺がんと放射線被ばくとの間の関係を否定しようとすれば、それに合わせて地域分けを変更すればよいだけである。評価部会は、初めに結論ありきで地域分けをしたとしか考えられない。もともと、UNSCEARの甲状腺吸収線量は、実際のデータではなく、あくまで推計値であり、しかも過小評価に過ぎる、との批判がある。
われわれは、福島県「県民健康調査」検討委員会甲状腺検査評価部会に以下のことを要請する。
- .従来の地域分けを採用しなかった理由を明らかにすること。
- .従来の地域分けに基づいて各種調整因子に関して再度計算し直し、公表すること。
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